くすんだような青紫色がスミレを連想させることから、アイオライトの語源はギリシャ語の「ion(すみれ色)」と「lithos(石)」に由来しています。鉱物名はコーディエライト、和名は菫青石。サファイアに似ていることから、”ウォーターサファイア”というフォールスネーム(偽名)もあります。
主な原産地はインドやスリランカ、ミャンマーなどで採掘されます。
石の基本の色は青紫ですが、光の当たる角度、見る角度によって色が変化して見える多色性が魅力的です。この多色性により、一部が黄色や茶色、白色などに見えるようになり、クラックが入っていればレインボー効果が生まれます。
バイキングの必需品だった?
アイオライトの多色性にまつわるお話には、大海原を渡っていた古代のバイキングに深く関わりがあります。バイキングは航海の際にアイオライトを羅針盤代わりに使用して、太陽にかざして青色が鮮明に見える方向に船を進めていた、また曇りの日には太陽の位置を確認するために、フィルター代わりに使用していたと言われています。
※実際は1方向が青く見えるのは石自体の性質であり、羅針盤的な役割ができるということについては、科学的信憑性はありません。
日本でしか取れない!桜石
日本のみで産出される桜石。
桜石は雲母と緑泥石の混合物で、菫青石が風化してできたもので、断面が桜の花びらに似ていることから桜石と呼ばれています。(※正式名称は菫青色仮晶)アイオライトが桜石になるには、アイオライトの結晶が分解し、別の鉱物に変質する仮晶という現象がキーワードになります。この仮晶とは、鉱物の結晶形が保たれたまま中身が別の鉱物の結晶形に置き換わる現象の事で、菫青色仮晶と呼び、桜色がかった金色になります。
栃木県の渡良瀬川や京都府で産出されることが多く、京都府では絶滅危惧種に指定され、亀岡の桜石は京都のレッドデータブックに記載されています。
色はいくつ見える?
見る方向によって色が変わり、二色性のある石として”ダイクロアイト”という別名も持つアイオライト。実は二色ではなく、三つの色が見えるほうが多いようです。青紫や淡い青、黄褐色、黄緑色など、その石によって異なりますが、どれか三色が見える事が多いと言われます。