私たち女性にとって憧れの存在でもあるジュエリーは、紀元前3000年~2000年前の古代エジプト文明の頃から宝石や貴金属を使ったものが使用されていたと言われています。
そして、古くから宝石を身につける習慣があるヨーロッパでは、宝石の永久的な美しさに想いを重ね、家族の変わらない幸せを願って受け継いでいく風習があります。
今回は古くからヨーロッパに伝わる風習「ビジュ・ド・ファミーユ」についてご紹介させて頂きます。
ヨーロッパで受け継がれる風習「ビジュ・ド・ファミーユ」とは
「Bijou de famille(ビジュ・ド・ファミーユ)」はフランス語で“家族の宝石”という意味です。Bijouはジュエリーや宝石、familleは家族を意味しています。
つまり、ビジュ・ド・ファミーユは親から子どもへ、子どもから孫へと引き継いでいくジュエリーの総称です。
歴史を重んじる文化が強いヨーロッパでは、何らかの形で母や祖母から受け継いだジュエリーを持つ人が多いそうです。また、男性の場合はプロポーズの際の婚約指輪として家庭で受け継がれてきたビジュ・ド・ファミーユのジュエリー贈ることもあると言います。
結婚式のサムシング・フォーとして取り入れられることも
ヨーロッパには結婚式の際に「4つのもの」を取り入れると花嫁が生涯幸せになれると言われるSomething Four(サムシング・フォー)という風習があります。
サムシング・フォーはヨーロッパで親しまれている童話『マザーグース』にルーツがあると言われていて、日本でも近年では結婚式の演出として親しまれています。
Something Four(サムシング・フォー)
Something Old=何か古いもの
花嫁を育ててくれた家族、特に母親や祖母が身につけたものを身につけることによって、祖先からの幸せを引き継ぎ、幸せな結婚生活が送れますようにという意味があります。宝飾品や婚礼衣装などを用意するのが一般的です。
Something New=何か新しい物
新しいことを始める時は、困難にぶつかることも多いものです。これから始まる結婚生活の苦難を乗り越えていけるようにという意味が込められています。手袋や靴を用意することが多いようです。
Something Borrowed=何か借りたもの
既に幸せな結婚生活を営んでいる友人や隣人から何かを借りることによって、その幸せにあやかるという意味があります。ハンカチやアクセサリーがよく使用されます。
Something Blue=何か青いもの
聖母マリアのモチーフで、純粋な色とされるのが青色です。その青色を身に付けることで新郎への忠誠を誓うという意味があります。目立たない場所に付けると良いと言われているので、白いレースのガーターに青色のリボン等を装飾して身に付けます
ビジュ・ド・ファミーユはこのサムシング・フォーの中の「Something Old=何か古いもの」として準備されることが多いそうです。母親が身につけていたものだけでなく、時には祖母やそれ以上前から受け継がれてきたジュエリーを使うこともあるといいます。
家族が大切にしてきたジュエリーを次の家族へと受け継ぎ、末永い幸せを祈るというのはとても素敵な習慣ですね。
英国キャサリン妃のサファイヤの指輪も「ビジュ・ド・ファミーユ」
世界で最も有名なビジュ・ド・ファミーユと言えば、やはり英国ウィリアム王子からキャサリン妃に贈られたサファイヤの指輪です。この指輪は元々ウィリアム王子の母、故ダイアナ妃のものでした。
ダイアナ妃のこの指輪への想いは強く、チャールズ皇太子と離婚した日にもこの指輪をしていたといいます。
家族の思い出が詰まったサファイヤの指輪
チャールズ皇太子と離婚し、王室を出たダイアナ妃はその後事故に遭い亡くなられました。残された2人の王子は深い悲しみの中、母の遺品を受け継ぎます。ウィリアム王子はカルティエのタンクフランセーズという腕時計、ヘンリー王子はサファイヤの指輪をそれぞれ選びました。
ヘンリー王子がこの指輪を選んだのは「大好きな母と手を繋ぐ時、いつもこの指輪が手に当たって痛かったから」というエピソードを明かしています。
しかし、ウィリアム王子がキャサリン妃にプロポーズをする際にヘンリー王子と相談し、サファイヤの指輪と腕時計を交換しました。ウィリアム王子は交換したサファイヤの指輪でキャサリン妃にプロポーズをし、現在はキャサリン妃が身に付けるに至っています。
ダイアナ妃はウィリアム王子が学校に行った際「人生で好きな人が見つかったら、その人をしっかり捕まえて、あなたを愛してくれる人が見つかったらその人を守っていかなくてはいけない」と話したと言います。
ビジュ・ド・ファミーユとして贈られたサファイヤの指輪には、ウィリアム王子のキャサリン妃への深い愛情、そして故ダイアナ妃への教えを忘れない気持ちが表れているのかもしれません。
受け継がれたジュエリーは魅力がたっぷり
ビジュ・ド・ファミーユは家族から受け継いだジュエリーを大切にする素晴らしい習慣です。こうした風習のあるヨーロッパでは、新しい宝石を購入する時には「子どもや孫に受け継いでいける良いものを」という気持ちが非常に大きいと言います。
確かに古いジュエリーは今とは違うものの、材質や宝石の質の良いものも数多くあり、今となっては手に入らないようなものもたくさんあります。
何より家族の思い出が詰まったジュエリーを次の世代へ繋いでいくというのは、とても素晴らしいことです。
より身近に使いたいならリフォームもおすすめ
とはいえ、昔のジュエリーが現代でも身につけやすいかというと難しい場合もあります。
そういった場合におすすめなのが、ジュエリーをリフォームに出すという方法です。あまり知られていないかもしれませんが、既にあるジュエリーを違うものにリフォームすることができるお店が今は数多く存在します。
例えば、指輪の石を取り出してペンダントに仕立てたり、指輪を全く違うデザインのものにしたり、弱くなった座金を修理するだけというのもあります。
既にある宝石にプラスして新たな宝石を足し、より豪華なジュエリーにすることもできます。
筆者の知人の女性は婚約指輪が指の変形で指に入らなくなってしまい、結婚記念日にペンダントに仕立て直したという方もいました。
「母から貰ったジュエリーは素敵だけど、普段使いにはちょっと…」という場合にはこうしたサービスを利用するのがおすすめです。
自分が選ぶジュエリーもいつか自分の子供の宝物になる
いかがでしたか。今回は家族にジュエリーを受け継いでいくビジュ・ド・ファミーユについてお話ししました。
この習慣はまだまだ日本では馴染みが少ないものなので、お母様や親族の方が持っている宝石を自分が身に付けることに抵抗がある方もいるかもしれません。
宝石や天然石は究極的には数に限りがあるものです。今世の中に出ているものが全てではありませんが、その量は年々減少し、その分価値も上がっていきます。
予算が十分にあれば、新しい物を購入するのも良いと思います。ですが、家族の幸せと一緒にあったジュエリーに目を向けるというのも新しいものと同じくらい価値のあることではないかと私は思います。
自分のジュエリーを選ぶ際に「いつか私の娘がこれを身に付ける日が来るかもしれない」と思うと何気なく目を向けているジュエリーがまた違ったものに見えてくるかもしれません。
新しいジュエリーを選ぶ際はぜひ参考にしてみて下さいね。