バフがすべてじゃない!ジュエリー研磨あれこれ

プラチナ、ゴールド、シルバー。

ジュエリーの魅力は、一点の曇りなく輝きを放つ地金の美しさでしょう。この輝きは「研磨」という技術から生まれてきます。

ワックスパターンを石膏に埋めて鋳造し、吹き上がったばかりの地金はザラザラの鋳肌につつまれています。この鋳肌をどのようにして磨き上げていくのか、貴金属を輝かせる工程はバフだけではありません。

研磨の種類

ひとくちに研磨と言っても、機械でおこなうバレル研磨から、職人が一つ一つバフがけするバフ研磨まで各種の方法があります。ここでは、バフ研磨以外の機械を使った研磨について説明していきます。

電解研磨

鋳造から上がってきたばかりのパーツは、ザラザラした鋳肌に包まれています。この鋳肌を一皮むくことの出来る研磨方法の1つとして、電解研磨が挙げられます。

「電解研磨」というとなんのこっちゃ?という感じですが、原理は中学校で習った“電気分解”です。温めた専用の電解液の中に、電極につないだ貴金属のパーツを入れてゆらゆらさせます。しばらくつけて取り出すと、ザラザラの鋳肌がつるりと取れてちょっとびっくりします。

とても便利な研磨方法ですが、注意してほしい点もあります。電解研磨では表面が一律に分解されていくので、細いツメ部分が痩せてしまいがちなのです。鋳肌を取りたい一心で電解研磨をかけすぎてしまうと、ちょっと後悔することにもなるのでお気をつけ下さい。

この電解研磨の電解液、一昔前は有毒なシアン化合物を使っていたので管理がとても大変でした。しかし、現在ではシアン化合物を含まない電解液が普及したので、安心して作業できるようになったのです。技術の進歩はありがたいですね。

バレル研磨いろいろ

バレル研磨は、大量生産に向いた研磨方法です。とはいっても彫金ですから磨きたいものは小さく、数も少ないので、一般的に言われる工業的なバレル研磨とは規模が大きく違います。 規模は違っても原理は同じなので、使われる用語もほぼ一緒。研磨したいものを「ワーク」、研磨してくれる物質を「メディア」と呼び、研磨剤は「コンパウンド」といいます。

低速バレル研磨

低速バレルは、たる状の容器に磨きたい「ワーク」と研磨石の「メディア」、液体の「コンパウンド」と水を入れ、グルグル回転させます。容器の中ではワークとメディアが擦り合わされて研磨されていきます。低速の回転はワークに無理な力がかからないので、細い地金を歪みなく研磨できるのがメリットです。

低速というだけあって仕上がるまで数時間かかることもあり、実は彫金の現場ではあまり目にすることがなくなった研磨方法でもあります。現在は大量生産の時代でもありませんしね。

彫金業界ではあまり見かけなくなりましたが、一度に大量に処理でき安価で品質も一定なので、工業的にはいろいろな金属で使われている研磨方法です。

遠心バレル研磨

容器の中にワークと、メディア(研磨石が一般的)、水、コンパウンドを一緒に入れ、遠心力を一定時間かけます。遠心力のかかった容器の中ではワークとメディアが擦り合わされて研磨されていきます。かかる時間はおおむね30分~1時間程度なので、仕上がりが早くとても魅力的です。

デメリットがあるとすれば、機械自体がかなり大型ということ。使用するメディアの大きさにもよりますが、あまり入り組んだデザインには向いていないところも挙げられます。

磁気バレル研磨

遠心バレルは容器ごと遠心力をかけるので大きな機械になってしまいますが、磁気バレルは容器の中でワークとメディアを回転させて擦り合わせます。必然的に機械自体が格段に小さく、個人で所有できる大きさが魅力の研磨方法です。

磁気バレル研磨ではメディアとして針状の金属を使い、現場ではこのメディアのことを「針」とか「芯」とか呼んでいたりします。金属のメディアは磁気を使って容器の中で回転させることができ、ワークと擦り合わされます。メディアが針状なので細かい部分までよく研磨できるのが特徴です。

私自身の経験ですが「こんなに小さいのかー!」と、磁気バレルが登場した時は衝撃を受けたものです。それに、バフが入りにくいような細かいところまで研磨が入るのでとても重宝します。

ただ、あまり小さい磁気バレルは、研磨の力が弱いので購入する際は注意が必要です。

研磨の技術は日進月歩

いかがでしょうか。研磨というと、職人がバフに向かって一日中作業するイメージがあるかもしれませんが、現在ではいろいろな方法が開発されています。最終的には職人の手になるところが大きい「研磨」ですが、その直前まではたくさんの技術革新が起こっている世界でもあります。

彫金業界は分業化の歴史をたどってきましたので、原型、鋳造、造り、磨き、石留めなど専門が細分化されている特徴があります。これまで見てきた機械を使った研磨工程は、鋳造やメッキの専門業者が請け負うこともある工程です。

個人で彫金をされる方小規模な工房の方であれば、高価な機械を購入する前に、身近な業者に相談してみるのもおすすめです。その道の専門家と話をするのはとても新鮮ですし、新しい技術を知るきっかけになるかもしれませんよ。

最新情報をチェックしよう!
>