宝石のカットの種類

宝石のカットとは、原石に人間がカットという技術を加えることで、石の内部の美しさを最大限に引き出す技術です。

ダイヤモンドと言えば、ブリリアントカットが有名なように、宝石の原石はそれぞれの性質や、ジュエリーの見せ方に合った、カットの方法があります。

ジュエリーを購入する際には、つい石のカラーや大きさ、ジュエリーの地金について注目してしまいがちですが、石のカットの違いによって、同じ石でもそのジュエリーの表情は大きく変化します。

カットの種類は、実は世の中に数えきれないほどありますが、今回はジュエリーショップでよく見かける代表的なカットと、そのカットをよく使用する石やジュエリーアイテムについて、ご紹介させていただければと思います。

ファセットカット

宝石が面で囲われてキラキラ輝いている石は、ファセットカットに分類されます。

ファセットとは、そのキラキラ輝く面のことを意味します。主に透明度の高い石に使用されることが多いカット方法です。

ファセットカットの誕生は、ダイヤモンドの「ポイント・カット」と呼ばれる、ダイヤモンドの割れやすい方向を利用してカットする方法であったと言われています。

ファセットカットの中にもいくつものカットの種類が存在しますが、ジュエリーとしてよく使用されている、代表的なファセットカットの種類をご説明します。

①ブリリアントカット

三角形やひし形のファセット(面)を組み合わせたカット方法です。石全体の形を上部から見た状態で円形になっているものをラウンド、楕円形になっているものをオーバルと呼び、現在では涙型のペア・シェイプや、ハート形のハート・シェイプなど、その形の種類はとても多く存在します。

初めに、ダイヤモンドのラウンドブリリアントカットを確立させたのはベルギーの職人で、カッティングの技術者でもありながら、数学者でもありました。そのため、ダイヤモンドのラウンドブリリアントカットは、屈折や反射を光学的に計算つくされたカット方法なのです。

カットされた石としての形は異なっていても、ブリリアントカットは石が取り込んだ光をファセットの多面に反射し、石を輝かせていることが特徴です。ダイヤモンドが代表とされていますが、光の反射によってカラーストーンの色を際立たせるためにも使用されるカット方法です。

②ブリオレットカット

しずく型の立体的な石に、三角形や四角形のファセットを表面全体に施したカット方法です。ブリリアントカットと比較すると、何倍ものカラット数を必要とするカット方法のため、高価で希少なジュエリーに仕上がります。

ファセットの面の大きさや数、形によって見栄えが全く異なってくるため、カットによって個性があります。

立体的な石に仕上がるので、ジュエリーが揺れた時にとても繊細な輝きを放ちます。指輪などの平面的なジュエリーよりも、全方位から輝きを取り込んで光を放つことが出来る、イヤリングやピアスなどに使用されることの多いカット方法です。

サファイヤなどの色味のあるカラーストーンに多用されるカットですが、まれにダイヤモンドにも使用されています。

③ステップカット

カットされた宝石の、最も外周にあたるファセット部分をガードルと呼びます。そのガードルの形を長方形や台形にカットし、平行に連ねたカット方法をステップカットと言います。石を側面から見ると、ファセットが階段状になっているように見えるため、ステップカットと呼ばれています。

石の上部の面が平面的で、輝きよりも石本来のカラーを際立たせることができるカット方法です。

一方で、ブリリアントカットやブリオレットカットに比べると平面の大きさが大きくなるため、元からある石の汚れや傷なども目立ってしまうことがあります。上質な原石でないと、使用することが難しいカット方法です。

ジュエリーとしては特にエメラルドに多く使用されるため、「エメラルドカット」とも呼ばれることがあります。

④ミクストカット

ブリリアントカットとステップカットを組み合わせたカット方法です。石の上部にブリリアントカットの光の視覚効果、下部にステップカットのデザイン性を取り入れているものが多く見られますが、そのカット方法は様々です。比較的最近生まれたカット方法で、ラウンドブリリアントカットの人気をしのぐ勢いです。

石の色味がとても強調されるので、無色の石にはあまり使用されないカットです。

⑤ファンシーカット

①~④に当てはまらないけれど、石にファセットがあるカットのことを指します。カットをする職人の独自の技術によって、オリジナルのカットもファンシーカットに含まれます。

カボションカット

石の表面をドーム状に、底部分を平面にカットする方法です。ファセットカットよりも、歴史は古く、15世紀以前のアンティークジュエリーの多くはカボションカットを使用しています。ファセットカットは透明度の高い石に施されることが多いですが、カボションカットはそれと対照的に、透明ではない石に使用されます。

なぜかというと、カボションカットの特徴は、石の中にあるインクルージョン(内包物)を視覚的に楽しむカット方法だからです。石の中には、オパールに代表されるように、大部分の色味と違った色味や、曇りのようなものの美しさを楽しむものもあります。オパールの他に、ヒスイなどの半透明な石や、トルコ石などの不透明な石にも使用されています。そのような石の内包物による輝きや石本来の艶を、あえてそのまま残しておきたい場合にカボションカットが施されます。

無色透明なダイヤモンドや、カラーの濃淡のない石には使用することはありません。

また、ファセットカットでは傷が目立ちやすくなってしまう石にも、カボションカットが多用されています。

指輪など、自分の手で触れる場所のジュエリーとしては、つい触りたくなる手触りも特徴的です。

タンブリング

原石を研磨剤と共に、ドラムに入れて回転させることで研磨する方法を、タンブリングといいます。

カットというと計算されつくされた、人間の手によるカットを想像されるかと思いますが、原石の形をあえて残しながら、石の色味や柔らかい輝きを見せるのもカットの方法です。

ドラムで回転することで割れてしまう石も多くあるので、割れにくく、比較的安価な石で多く使用されています。ジュエリーとして使用されることはほとんどありませんが、おみやげ物や博物館で販売されている標本用の石などに使われることの多い方法です。海で研磨されたシーグラスのような優しい色合いと、さらしとした触り心地の表面が特徴的です。

今回は、日常でよく見かけるジュエリーのカット方法について、ご紹介いたしました。

石のカット方法には、その輝きをさらに増すことが出来るもの、石の本来の美しさを際立たせるもの、自然に近い状態の美しさを引き出すものなど、石の性質や見た目、その用途に合わせて、とても様々なものが存在します。

ジュエリーを購入する際に、石の種類には注目されることが多いかと思いますが、どのようにカットされているかによって、そのジュエリーのゴージャスさや、カジュアルさなどのテイストも、大きく変わってきます。

今後、ジュエリーをご購入される際にはぜひ、石の種類やカラー、ジュエリーの地金についてはもちろん、石に自分好みのカットが施されているかどうかも、注目していただければと思います。

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