ジュエリーに欠かせない宝石といえば、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルドなどが挙げられます。また、誕生石として有名なアメジストやアクアマリンなどの半貴石はリーズナブルなジュエリーに用いられることもあるので、若い人たちにも人気の宝石です。
古代から日本や中国で人気のあった珊瑚や、日本で世界初の養殖が成功した真珠などは、世界的にも人気のあるジュエリーの素材ですよね。
天然石と処理石
これらジュエリーとして扱われる宝石は、その希少性と見た目の美しさに価値を見出しているものです。そのため、単純に「天然であれば良し」とされるわけではなく、いろいろな方法で処理をしてきれいに見せられている可能性があり、取り扱いには知識が必要です。
せっかく気に入ったルース(裸石)が手に入っても、加工していくうちに美しさが半減したり、破損してしまったりしたら悲しいですよね。そんな事にならないように、よく流通する貴石と半貴石の取り扱いについてまとめてみました。
4大貴石
貴石の定義については諸説あるようですが、大まかに表現するならば「取引上高価な価格がつけられる宝石」ということでしょうか。ジュエリー業界では、そのなかでも特にダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルドを4大貴石として区別しています。
ダイヤモンド
ダイヤモンドは、無色透明で内包物がないものが高価とされます。モース硬度が10なので、他の宝石に比べてダントツの硬さを持っています。他の宝石を傷つけてしまうほどの硬さを誇りますが、全く割れないというわけではありません。瞬時に加えられる衝撃で割れてしまうことがあるので,石留め時には注意が必要です。
最近はファンシーカラーのダイヤモンドに人気がありますが、高圧高温処理、放射線処理などが施されていることが多いようです。また、ダイヤモンドに限った話ではありませんが、インクルージョンやクラック(割れ)などがあると割れやすいので注意が必要です。
サファイアとルビー
サファイアとルビーは同じコランダムの仲間です。ブルー以外のカラーバリエーションが多く、中でも赤いものがルビーと呼び習わされているというのが正確なところでしょう。
市場に出回っているサファイア、ルビーの多くは、エンハンスメントと呼ばれる加熱処理が行われていて、自然の状態よりも美しく発色が強くなっています。この発色は経年によっての変化がありません。モース硬度(※1)は9とダイヤモンドにつぐ硬度で靭性(※2)にも富み、超音波洗浄器での洗浄にも安定的です。
エメラルド
エメラルドはアクアマリンと同じ「ベリル」ですが、アクアマリンよりも衝撃に弱く、取り扱いに注意が必要な宝石です。透明度の高いものは希少なため、シダーオイルを含浸させるなど、古くからエンハンスメント処理されることが一般的です。
現在流通しているものも処理されていることが多いようです。モース硬度は7,5~8と硬い部類に入りますが、内包物が多かったり傷が多かったりするので、石留め時に気をつけないと欠けてしまうことがあります。超音波洗浄器によって色が抜けてしまうなどのトラブルがあるので、取り扱いには特に注意が必要です。
アレキサンドライト
太陽光の下では青緑、人工照明の下では赤へと色変化をおこす希少な宝石で、4大貴石に加えて5大宝石と呼ばれることもあります。モース硬度は8,5で劈開性(※3)がなく、安定的な宝石です。
基本的には超音波洗浄器を使用しても問題はないのですが、フラクチャー充填している場があるので安全性を考慮して避けたほうが無難です。
人気のある半貴石
アメジスト
日本では「紫水晶」と呼ばれ、鉱物的な分類では「石英」です。モース硬度7のため他の石とぶつかって欠けてしまうこともあり、石留めの際は細心の注意を払いましょう。含浸などのトリートメントが行われていることもあるので、超音波洗浄器の使用にも注意したほうが良い宝石です。
アクアマリン
爽やかな水色が印象的なアクアマリンは、鉱物的な分類でいえばエメラルドと同じ「ベリル」に分類されます。同じ鉱物ですがエメラルドよりも安定していると言えるので、超音波洗浄器での洗浄もある程度行えます。他の宝石同様、含浸などのトリートメントが行われている場合は、洗浄時に注意が必要です。
ペリドット
古くはエメラルドと混同されていたことのある緑色の半貴石です。鉱物名は「苦土橄欖石(くどかんらんせき)」です。モース硬度は7なので、他の宝石によって傷つくこともあるので、保管時に注意したい宝石です。また、超音波洗浄器での洗浄は避けたほうが無難です。
トパーズ
かつて黄色い宝石はすべてトパーズだと考えられていましたが、実際には無色、青、緑、ピンクなど多くのカラーバリエーションがある宝石です。トリートメント処理をされていることも多く、放射線照射によって青色に発色させたブルートパーズは市場にも多く出回っています。
モース硬度は8ですが、劈開性があるので超音波洗浄器などの衝撃にはあまり強くはありません。
トルマリン
とにかくカラーバリエーションが多く、2色が一つの宝石内に同居する「バイカラートルマリン」や、緑色と赤色が一緒になった「ウォーターメロントルマリン」など印象的なものもあります。
モース硬度は7なので、他の宝石とぶつかったりすることで欠ける可能性があり、超音波洗浄器の使用は控えたほうがよさそうです。
ガーネット
日本名は「柘榴石」といい、赤い色のものが有名ですが、実にたくさんの色相があります。モース硬度は6,5~7,5なので、他の宝石と触れ合って傷がつかないように注意が必要です。
比較的安価であり、粉末状の研磨剤「金剛砂」として、貴金属の梨地仕上げにも利用されます。フラクチャー(割れ目)のないものであれば、超音波洗浄器にも安定的です。
真珠
真珠は貝の中で生み出される宝石です。生体由来なので、モース硬度も2,5ととても柔らかいのが特徴です。超音波洗浄器は使わず、ぬるま湯に洗浄液を入れて洗浄するのが鉄則です。洗浄液はパールなどの海由来の宝石に使えるかどうか、よく確かめてから使用しましょう。糸に通されたネックレスは、洗浄後、糸の水気を完全に乾かす必要があります。
珊瑚
海底に住む小さなイソギンチャクのような生物「ポリプ」によって生み出される珊瑚。日本や中国などのアジア圏では赤い「血赤珊瑚」の人気が高く、欧米では白から薄紅色のバリエーションがある桃色珊瑚に人気があります。モース硬度は3,5と柔らかく、日光や熱にも弱いので、取り扱いに注意が必要です。
多孔質のため液体につけておくと変色の原因にもなるので、洗浄時には気をつけましょう。当然ながら洗浄液にも弱いので海由来の宝石に使えるかどうか、確かめてから使用しましょう。
ヒスイ
ヒスイには大まかにわけて軟玉(ネフライト)と硬玉(ジェダイト)があります。これらは鉱物的に全く違いますが、見かけ上の姿がよく似ているためどちらも「ヒスイ」として扱われています。
宝飾品によく使われているのは硬玉で、モース硬度は6,5~7程度。傷がつきやすいのですが、靭性が高く割れにくい性質を持っています。ヒスイには漂白、含浸などのトリートメントが行われることが多いので、超音波洗浄器での洗浄については、行わないほうがよいでしょう。
オパール
オパールはコモンオパールとプレシャスオパールに大別され、そのどちらもモース硬度5~6と柔らかい部類に入ります。また、オパール自体が水分を含んでいるので、水分に対して不安定です。
当然ながら、洗浄時には超音波洗浄器の使用は避けるべきです。宝飾品にセットしたあとの仕上げにも注意が必要で、研磨の際の摩擦熱も大敵です。紫外線や極端な乾燥にも弱いので、保管にも気を使う宝石です。
(※1)モース硬度
鉱物の硬さを表す指標の一つです。モース硬度の数字はある1つの鉱物が他の鉱物によって傷つけられることが相対的にどれだけ容易か、または困難であるかに基づいて決まります。
(※2)靭性
靭性とは、衝撃に対してどれだけ強く、割れにくいかを示す指標です。宝石において靭性が高いという場合は、欠けにくいと考えられます。
(※3)劈開性
劈開性とは、結晶や岩石の割れ方がある特定方向へ割れやすいという性質のことです。
参考文献
スミソニアン協会監修(2017)『宝石と鉱物の大図鑑』日東書院.
参考ウェブサイト
GIA “宝石事典”(参照2021-1-24) <https://www.gia.edu/JP/gem-encyclopedia>
その他Wikipedia等