思ったより大変?リングのサイズ直し

ジュエリーブランドや宝飾店で気に入ったデザインのリングがあっても、指のサイズに合わないと購入をためらってしまいますよね。

そんなとき、多くの宝飾店では「サイズ直し」というサービスを行っていますが、この「サイズ直し」ってどんなふうに行われているのかご存知ですか。

普段なかなか目にすることのないサイズ直しを、作業工程の順番に見ていくことにしましょう。

サイズ直しの作業工程

作業前に

作業前には必ず中石やメレダイヤの状態をよく観察し、できれば中石の傷をメモしておきます。特に預かり品の場合は必ず確認記録しておかないと、のちのちトラブルのもとになるので重要です。

サイズの確認

サイズ直しをしたいリングの、もとのサイズを確認します。サイズ棒という器具に差し入れて正確なサイズを測ります。サイズ直しでは地金を切ったり足したりするので、この段階で計量も必ず行います。

リングを切って目標のサイズに合わせる

希望のサイズを確認し、のばすのか縮めるのか判断します。おおまかにいうと1サイズに付き1mm強。縮める場合は糸ノコで地金を切り取り、延ばす場合は糸ノコで切ったすき間に地金を挟み込んで目標のサイズにします。

中石がある場合やメレダイヤが入っているリングは、特に慎重に行います。サイズを縮める時は石の緩みに注意し、メレダイヤが落ちないように気を配ります。サイズを大きくする時には中石に無理な力が加わることがあるので、中石を外すほうが安全です。

ロウ付けする

切った部分をロウ付けします。このときにすり合わせがうまくいかず、すきまが開いているようだとうまくいきません。丁寧に切断面を合わせないとロウがしっかり回らなかったり、磨き作業でロウ目が引け(※)てしまったりするので慎重に作業します。

※ロウ目が引ける…地金とロウ材の硬さが違うため、磨いたときにロウ部分がへこむこと。

ちなみに、シルバーリングは必ず中石を外します。熱伝導がシルバーほどではない金やプラチナは、リングの一部を水につけるなどすれば、中石を外さずにロウ付けできる場合があります。

とはいっても、エメラルドや半貴石、パールなどはとても熱に弱いので、外したほうが無難です。

ヤスリで整形する

ロウ付けした部分の地金とこぼれたロウ材をヤスリで整えます。このとき、ロウ材があまり残らないようにけずり、かつリングが細くなりすぎないように気を配ります。

磨く

ヤスリを細目、油目と順にかけ、ペーパーでなめらかに整えてヘラがけします。ヘラで表面を処理しておくとロウ目が出にくくなります。その後、ロウ目が出にくい方向を意識しながらバフがけしてツヤを出します。

磨きに入る前に、メレダイヤが落ちないようナナコで押さえるなど、全体をよく点検しておくことを忘れずに。

石留めする

外しておいた中石を再びセットし、仕上げのバフをかけます。作業前と作業後で、石に傷がついていないかよく確認し、サイズ直しの終了です。

こんなふうにして、リングのサイズ直しは行われます。“たかがサイズ直し”と言えないくらいの工程がありますよね。慣れてしまえばそれほど難しくはないのですが、作業をどれだけ丁寧にできるかが重要です。

サイズ直しに向かないデザインはあるの?

色々なデザインの中には「サイズ直し不可」なんていうリングもあります。デザインが全面にあるものは切ることができませんし、中石が大きいリングなどはサイズ直しに向いていないデザインと言えます。

また、リングのサイズを大きく変える場合などは、見た目の印象が変わってしまうこともあるので、慎重に見極めたいところです。接客スタッフは印象が変わると伝えなければなりませんし、技術者はつけ心地も含めてなるべく印象が大きく変わらないように配慮しなければなりません。

サイズ直しあれこれ

ブライダルリングなどサイズ直しする可能性が高い商品には、サイズ直しでデザインが変わってしまわないように、あらかじめ数種類のサイズを用意していることがあります。

サイズ直しが難しいデザインの場合、サイズの注文を受けてから製作するなんていうブランドもあるようです。数種類のサイズを用意するよりも、コストが掛からない方法といえるかもしれません。

思い入れのあるリングと人生をともにするために

これから長い人生をともに歩むことになるブライダルリングは、サイズ直しをすることが多いでしょう。ジュエリーブランドによっては“サイズ直し無料”をうたっていたりしますが、価格にサイズ直しの工賃が組み込まれているのかもしれませんね。

リングのサイズ直しをしたいという場合、そのリングに思い入れがあり長くつけていたいという思いがあるからでしょう。大切な思い出のあるリングを委ねるのなら、多少工賃が高くとも、技術のある工房に依頼することをおすすめします。

参考文献

秋山勝義 飯野一朗(2012)『彫金〈手作りジュエリー〉の技法と知識』東京堂出版.

塩入義彦(1996)『彫金の技法-ジュエリーデザイン-(新訂版)』理工学社.

小川千惠子(1992)『彫金の技法JEWELRY MAKING(新装版)』雄山閣

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