彫金を始めたい人へ 

彫金道具

彫金に興味を持った方はまず彫金の解説書を手に入れ、「彫金教室」を探すことから始めることが多いでしょう。でも、住んでいる地域に彫金教室が見つからなかったり、独学で学ぼうと考えたりしている方は、彫金を始める前に大きな問題を抱えることになります。

「どんな道具を、揃えたらよいのか」

彫金を始めたばかりの初心者には、なかなか悩ましい問題です。

現在では、ネットを検索すれば彫金に関する情報が一瞬で集まり、必要と思われる工具もネット通販で手に入れることができます。なんと便利な世の中になったのでしょう、感動的ですらあります。

しかし、プロ用の高価な工具が簡単に手に入るからこそ、無駄な買い物をしてしまう可能性が高くなっているともいえます。

そこで、初心者が道具を揃えるにあたって気をつけたほうが良い注意点、最初に購入するべきおすすめの工具をあげていきたいと思います。

自分のやりたいと思っていることを整理してみる

「彫金をやってみたい!」といっても、実は漠然としていることが多いものです。そんなときには、まずは自分の興味を整理して考えてみることをおすすめします。

自分の好みのアクセサリーを作りたいのか?

オリジナルジュエリーを作って、販売したいのか?

「彫金」という文字通り、彫金の技術を学びたいのか?

この3点だけでも、次のアクションは違ってきますし、揃える道具もまったく違ってきます。このあたりがクリアになって「よし彫金を始めよう!」となったら、初めて彫金の情報を集める段階に入ります。

彫金の情報を集める

そうです、まだ道具は買いません。この段階で買ってしまうと、あれもこれも欲しくなってかなりの散財をしてしまう可能性があるので、慎重に。

現代の彫金情報はネット上にたくさんあり、実際に作業している動画もたくさん見つかると思います。ぜひ、かたっぱしから見てみましょう、とても勉強になります。

その他にも忘れてはいけないのが図書館です。現在は絶版になってしまった古い資料などもあるので、おすすめです。もしも気に入った本があったら、古書として流通している可能性もあるのでネット上で探すこともできます。

ここまで進むと、ある程度彫金のイメージがつかめてくると思います。自分の作りたいものにはどのような技術が必要なのか、おのずと見えてきます。やっと必要な道具を吟味する段階に入りました。

ワックスパターンで作るのか彫金技術で作るのか

最初からすべてのジャンルに手を出してしまうと多くの工具が必要になってしまうので、製作方法から必要な道具を考えましょう。

製作方法は以下の2パターンが多いと思いますので、それぞれのメリットと必要な道具を見ていきましょう。

ワックスパターンからロストワックス法で鋳造し、作品を製作する

ヤスリ(金工と共通)

ワックス用のプロペラヤスリを1本。その他には精密ヤスリの中目があればとりあえずOKです。形状は平、甲丸、腹丸、三角、丸がおすすめです。最初から揃えると高額な出費になりがちなので、100円ショップのヤスリを試してみても良さそうです。

すり板とクランプ(金工と共通)

ワックスパターンを削るときに必要です。机に固定できるようにクランプもあると良いです。

リューター(金工と共通)

ワックス、金属の両方に使えるので性能を吟味して購入しましょう。

切削用スチールバー(金工と共通)

ワックスの裏抜き用にラウンド(丸)を数種類用意しておくと便利です。

糸ノコ(金工と共通)

ワックスを切り出すのに使います。地金を加工するときにも使えるので、最初に用意しても無駄になりません。

ワックス用ノコ刃

通常のノコ刃と違い、目が詰まりにくい形状です。

耐水ペーパー(金工と共通)

ワックスパターンの表面をなめらかにするために使います。

スパチュラ

セットで買うと高額になりやすいので1~2本用意して、必要なら買い足すようにします。

ワックスペン

スパチュラを火で温めて代用することもできますが、低価格なものがあるので購入検討しても良さそうです。

ワックス用スライディングゲージ

ワックスパターンの厚みを測ります。

サイズ棒とリーマー

指輪を作る場合は必要になります。

リューターは地金を直接あつかうようになっても使えるので、安物買いをしないようにしたいものです。また、数を揃えたいヤスリなどは、少しずつ買い足していく方が経済的かも知れません。

ワックスパターンを地金にして完成させる

ワックスパターンが出来上がったら専門業者に出します。鋳造を請け負ってくれる専門業者は、磨きまでおこなってくれることもあるので、仕上げまでを委託することもできます。

自分で仕上げる場合は、鋳造された作品のヤスリがけ→キサゲもしくは紙ヤスリ→ヘラの順番で完成まで持っていきます。

地金を直接加工する彫金技術で、作品を製作する

地金から作品を作る場合は、ワックスパターン製作とは比べられないほど多種類の工具が必要になります。

彫金技術の良さは、すべての工程を自分の手で進めることができるところでしょうか。手間をかけたぶん、出来上がったときの満足感はひとしおです。また、何度も練習して身につけた技術は大事な財産に感じられるはずです。

シルバーリングを作るために必要な工具

ヤスリ(ワックスと共通)

8本組、10本組の中目と油目を最初に揃えたいところです。形状は平、甲丸、丸、三角、腹丸など。そのほかに精密ヤスリの笹葉も用意できると心強いです。

すり板とクランプ(ワックスと共通)

ヤスリ作業にすり板は必須、机に固定できるようにクランプもあると良いです。

キサゲとヘラ

地金の仕上げに欠かせません。バフで代用することもできますが、設備が大がかりになります。

リューター(ワックスと共通)

スチールバー、ドリル、研磨用先端工具、シリコンポイントなど、先端の工具は必要になった順に揃えれば問題ありません。

糸ノコ(ワックスと共通)

ノコ刃も一緒に用意します。

金槌類

とりあえず、いも槌、からかみ槌があれば不足はありません。タガネを使って地金を彫る場合はおたふく槌があると作業が楽になります。

木槌

なました地金を、たたいて形を整えたりするときに活躍します。

金床もしくはアンビル、当て金

地金をたたいて加工するときに使う台になります。

しん金棒

あわせてサイズ棒もあると正確なサイズのリングを作ることができます。

ニッパー

地金を切るときに使います。

やっとこ類

先細やっとこ、時計やっとこは細かい加工に向いています。石留めをする場合は石留めやっとこが便利です。

ガスバーナー

小型のガスボンベを使うタイプがあれば、銀のロウ付けには充分です。

ロウ付け台と耐火レンガ

ロウ付けする場合は、耐火レンガなどの防火対策は必須です。周囲に燃え移らないよう細心の注意を払いましょう。

ピンセット

作品をつかんだり、ロウ材をつかんだり。ロウ付け作業にはなくてはならない工具です。

薬品類

ロウ付けにはフラックスと希硫酸が必要です。

銀ロウ

5分ロウ、7分ロウがあればよいでしょう。もちろん早ロウでも問題はありません。

銀地金

たたいて加工するのなら、柔らかさのある950銀がちょうど良さそうです。

シルバーリングを地金から作るために必要な工具をあげてみました。この他にも、あれば作業が早くなったり、正確になったりする工具はありますが、最低限これだけ揃えればシンプルなリングを作ることができます。

購入にあたって気をつけたいこと

購入するときに迷いそうなヤスリやリューター用の先端工具は、必要に応じて買い足していくと無駄がないように思います。必要だと感じたときが買い時でしょう。特にヤスリの形状は好みがあるので、最初は100円ショップのヤスリで試しながら揃えていくのもよいと思います。

上記に挙げた工具はすべてネット通販で購入可能です。たとえ同じような工具で迷っても、レビューや評価をじっくり読んで選ぶようにすれば、ほぼ問題なく購入できるでしょう。

では、リアル店舗を利用するのは無駄なのでしょうか。

答えは、「ノー」です。リアル店舗には、たくさんの道具を売ってきた工具のプロがいるのですから、機会があればぜひ訪れてみましょう。工具の評判や便利な使い方など、生きた情報をもらえるのがリアル店舗の良いところなのですから、積極的に質問して貪欲に情報を集めましょう。

リアル店舗とネット通販をうまく活用しながら、必要な情報と工具を手に入れることができれば上々です。そこまでいけば、すでにあなたは彫金の世界にとっぷり浸かっているといえそうですね。

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